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「エアーズ家の没落」
サラ・ウォーターズ著 
中村有希訳
創元推理文庫






秋にふさわしい没落モノでございます。

邦題そのままの哀愁漂うゴシック小説。
時代はやや新しく、第二次世界大戦後です。

ポーの「アッシャー家の崩壊」はじめ、私も大好きなお屋敷モノなのですが、好きなジャンルだけに「おなじみのパターン?」と、ちょっぴり退屈しそうな気がしなくもなく。

しかし読んでみたら・・・・さすが、巨匠サラ・ウォータズ!
やっぱり何かが違います。
退屈なんてとんでもない。スリリングで、先へ先へと読んでしまいます。

主人公は、ハンドレッズ領事館と呼ばれる歴史ある館。
ここに未亡人のエアーズ夫人と、成人した姉弟が住んでいます。

語り手の「わたし」は、一家の主治医。
館で次々と起こる説明のつかない怪奇現象について懐疑的な立場をとり続け、メイドのベティを疑ってみたり、精神疾患を理由にしたり、なにかと理屈を言いつつ、どんどん深入りしてゆきます。 
しかし自分では「いい人」のつもりの彼だけど、実は登場人物中もっとも恐ろしい男かも・・・

長男ロデリックは、かつて美少年だったが戦争で顔に火傷の傷痕を負い、脚もひきずっていて、そしてもちろんエアーズ家最後の当主。
という最強にゴシックなキャラクター設定にもかかわらず、あまり魅力的には書かれておらず、たいして活躍もせず、入院して早々と退場。最後は華やかに散るでもなく、ただただ悲しい姿に。

娘キャロラインは、最もゴシック小説とほど遠いキャラクター。
可憐でか弱いお嬢様とは一味違います。がっしりしたゴツめの容貌で、外見どおり心身ともに健康優良。
使用人を雇えない経済事情や、障がいをもつ弟を助けて、家事や庭仕事、農場の手伝いもこなしちゃう。
戦時中は海軍婦人部隊にいたという前歴もあり、屋敷で謎の出火が起きたときは率先して事態収拾に奔走したり、ときには自分の意見をぴしりと言ったり。ゴシック小説のヒロインには不向きでも、ハリウッド映画のヒロインの素質なら充分にアリ。
たくましさもある一方、実直で根のやさしい女性。 
そんな彼女を「不器量」のひと言で片付ける周囲の目線の残忍さが、コワさに味つけしております。

いっそキャロラインがもっと不実で臆病だったら、館も家族も見棄て、恋に落とし前もつけず、ビビりまくって逃げ出したはずなのに。

最後、急に目が覚めたようにてきぱきと決断しはじめ、望まない関係に終止符を打ち、「屋敷を手放してアメリカかカナダへ渡る」と宣言する彼女には、心底エールをおくりたくなります。

でもこの不気味な館は、彼女の自立や旅立ちを応援してはくれない。
それとも彼女の決断が遅すぎたのか・・・

そう、これはある種のホラー映画がそうであるように
女の子に甘い夢をくれるのでも励ますのでもなく、むしろ警告の物語。





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プロフィール
HN:
アリョーシカ
性別:
女性
趣味:
読書、猫
自己紹介:
果砂璃亜(かさりあ)国という架空の国をテーマにしたお洋服を制作しています。
めざすのはカラフルなゴシック。

好きな監督
ティム・バートン
ジョン・ウォーターズ

好きな音楽
EVANESCENCE
RIHANNA
LADY GAGA

好きな本
SF ホラー
19世紀英国小説とロシア文学
生物学

大学で美術史と油絵を学び
しばらく社会人
それからまた服飾の学校
上の写真は専門学校の時の卒業制作です
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